ドッヂスリージョイント

開発エピソード

1.開発に至った経緯
1995年1月17日未明、巨大地震が兵庫県南部を襲った。死者6000人を超え、道路、鉄道、建物、ライフラインに甚大な被害を出したが、免震建物の被害は軽微であった。
免震建物は、地面に直結した基礎の上にゴムを置き、その上に建物を乗せて、地震の強い揺れをゆっくりとした大きな揺れに変えて建物を地震から守る構造で、建物と地面の間には大きな相対変位を生じることになる。よって、地面から建物に入る配管の境界では、その相対変位を吸収するため、金属製フレキシブルチューブを用いた免震配管が採用されていた。

阪神淡路大震災において免震建物の有効性、安全性が実証されたことから、今後、免震建物は急速に普及することが予想された。そこで、金属製フレキシブルチューブを用いた現行方式よりも、さらに優れた免震配管を目指しての開発を開始した。

2.開発コンセプトの決定
金属製フレキシブルチューブを用いた免震配管は、2本のフレキシブルチューブをエルボ管で接続しL字形に配置することで、全水平方向の変位吸収を可能にしている。この方式についての施工業者の意見を収集すると、下記のようなものが挙がった。

●エルボ部を乗せるステージ架台が大きく、重い。
●現地の搬入口は小さく、大きなステージ架台、長いフレキシブルチューブを搬入するのが困難。
●工事の途中で、より大きい免震量に変更しようとすると、フレキシブルチューブを長く、ステージをより大きくする必要があり、簡単に設 計変更が出来ず、変更すると工期が遅れる。
●既存建物を免震化する免震レトロフィット工法があるが、既存配管をそのまま利用して簡単に免震配管に変えられる方法はないだろうか?
●変位反力が大きいため、強固な固定点が必要となる。

これらの意見を基にして、開発品のコンセプトを以下のように決定した。

【コンセプト】
(1)大きなステージが不要なもの
(2)出来るだけコンパクトなもの
(3)免震量の変更に対応できるもの
(4)既存配管を利用して免震配管に変えられるもの
(5)変位反力の小さいもの

現行のフレキシブルチューブを用いた免震配管に改良を加えるだけでは、これらのコンセプトを実現することは容易ではない。そこで発想を転換し、ベローズを応用した方式を検討することにした。

3.具体的な検討
(1)ベローズの数量と配置
我々はベローズが伸縮だけでなく、角変位(曲げ)を吸収できることに着目した。
ベローズを配管の関節に見立て、関節が曲がることで大きな変位を吸収できるからである。

問題は関節に当たるベローズを何箇所に設ければ最適なのかということであった。
一見、関節が多いほど良く曲がるので、変位吸収にも有利なように思われるが、最適な関節の数があるのだろうか?
見当が付かず、簡易モデルを作成し動作確認をすることにした。

関節部を10箇所にした500mm程度の配管モデルを作り、それをジグザグにした状態で片端を押え、他端を動かしてみると、前後左右自在に動く。しかし、これでは現行方式と同じように、自重を受けるローラ-台とそれを転がすための大きなステージが必要になる。
さらに、両端を固定していても、中央付近だけが動くことができるため、実際の配管に採用した場合、地震の揺れが治まっても配管が元通りに復帰できないことが予想された。

関節部が多すぎるのでは・・・。

関節部を徐々に減らしながら、動作確認を続け、3箇所まで減らしたところで、驚くべきことが分かった。
関節部が3箇所であれば、両端のどちらかを動かさない限り、中央部は動かない。
しかも、両端のどちらかを動かした後、元の位置に戻すと、中央部も元の位置に復元する。さらに詳しく観察すると、片端をどの方向に動かしても、中央部は一定の軌道上のみを移動することも分かった。これは、大きなステージを設けずとも、一定軌道上の移動スペースさえ確保すればよいことを表していた。
ただし、3箇所の関節部を直線的に配置したのでは、全水平方向の変位吸収を実現できない。そこで、現行のフレキシブルチューブを用いた免震配管と同様に、配管をL字形に配置し、関節部は配管が交差する箇所と両端に設けてみた。こうすれば全水平方向の変位吸収は可能となり、関節同士の配置距離を長くすることで、より多くの変位量を吸収できることも判明した。

つまり、関節部(=ベローズの数)は3箇所とし、免震配管の配置はL字形にすることが最適である という結論を得た。

(2)中央部の支持
実際の配管に採用することを想定すると、配管の自重を考慮する必要がある。
L字形配管の片端部は地面側、もう一方の端部は建物側に固定することができるが、重心近くの中央部にも支えがなければ、自重で配管が破損する恐れがある。しかも中央部の関節に相当するベローズは移動する為、固定出来ない。

自重を支えながら、ベローズを移動させる手段として、従来のようなステージを設ける方法や、エルボを建物から吊り下げる方法等も検討したが、それでは現地での施工性向上につながらず、開発コンセプトにも合わない。
さまざまな検討の中で、中央のベローズが一定軌道のみを移動することに着目して生まれたアイデアが、ベローズの直下に車輪を設けることであった。車輪でベローズと周辺の自重を受ければ配管が破損することはなく、常に重心を支え続けるので安定性も抜群のはずである。

中央部の支持方法は、車輪を採用することとして、その後の設計を進めた。

(3)低反力型ベローズの開発
ベローズの変位反力値は、ベローズの山高さ、板厚、層数、ピッチで決まる。今回の免震配管システムの開発に伴い、それらを全て見直した低反力型ベローズを開発した。
ベローズ単体での検証試験の結果、当社従来品の3倍以上の角変位吸収が可能となった。各ベローズでより多くの角変位を吸収できることにより、ベローズの配置距離を極力短くでき、システム全体をコンパクトにすることができた。

4.コンセプトの検証
設計が完了した時点で、事前に決定したコンセプトに合致しているかの検証を実施した。

(1)大きなステージが不要なもの
→中央のベローズは一定軌道のみを移動するので、大きなステージは不要で、軌道周辺のスペースさえ確保すればよい。

(2)出来るだけコンパクトなもの
→ベローズは3箇所に必要になるが、単体での全長はフレキシブルチューブよりもはるかに短く軽量。

(3)免震量の変更に対応できるもの
→各ベローズの配置間距離を変えることで、対応可能。

(4) 既存配管を利用して免震配管に変えられるもの
→既存配管にL字形の箇所があれば、対応可能。

(5) 変位反力の小さいもの
→新型ベローズを採用したことで、フレキシブルチューブを用いた方式と比較しても、はるかに小さい。

5.システムの検証試験
製品化を前に、システムの検証試験として、振動台加振試験を実施した。その結果、配管の漏れ、破損等はなく、システムの有効性が確認できた。

【振動台加振試験の概要】
(1)試験体
呼称径150Aおよび200A ドッヂスリージョイント

(2)加振波形
神戸波(1995年、兵庫県南部)
エルセントロ波(1940年、アメリカ)
上町断層波(大阪市を対象とした想定波)

(3)試験方法
振動台と地面との相対変位をドッヂスリージョイントで吸収させる。

6.結び
こうして免震建物と地盤との相対変位を安全に吸収できる免震配管システムが完成し、「ドッヂスリージョイント」と名付けられた。
ちなみに、ドッヂはドッヂボールのドッヂ、“素早く身をかわす、危険を素早くかわす”という意味である。

阪神淡路大震災以降も新潟県中越地震、東日本大震災など、各地で大規模な地震により甚大な被害が発生している。将来的にも大規模地震の発生が予想される中、免震建物の普及が進み、その技術は一般にも広く知られることになった。震災を契機に開発したドッヂスリージョイントがより多く採用され、今後の被害軽減につながることを期待する。




ork1ork2
特徴
ork3■従来品と全く異なる発想から生まれた成形フレキ
■ゴムホースのようなしなやかさ
■ブレード装着により抜群の耐圧性
■圧力損失が極めて小さい
■優れた耐久性
振動試験で最大93倍、曲げ試験で最大28倍を実現 (当社比)
標準寸法と性能表ork4

※ 1:使用温度40℃、安全率3、溶接効率0.7 での値

●最高使用圧力は設計条件により異なることがあります。
●上記サイズ以外も製作可能です。
●お客さまの仕様に合わせて、設計、製作致します。又、各種耐久試験の実施も可能ですのでご相談下さい。
●製品改良の為予告なく仕様変更することがあります。




クリアフローフレックス®

乱流抑制型低振動フレキシブルチューブ
Clear Flow Flex®(クリアフローフレックス)ork5

特徴
『Clear Flow Flex®/クリアフローフレックス®』は、柔軟性のある特殊なスリーブを内装したフレキシブルチューブです。 柔軟性など従来品の性能を損なうことなく、乱流を抑えて流体の通過で発生する振動・通過音を軽減することができます。 『クリアフローフレックス』は、振動・通過音を嫌う分光器・電子顕微鏡・医療設備・精密機器などの配管に適しています。

仕様
材質
・チューブ :SUS316L
・パイプエンド: SUS316L
・ブレード :SUS304
・スリーブ :アルミナ繊維

使用圧力:下表参照
使用温度 :-196°C~+40°C
許容リーク量: 1.33x10-10Pa・m3/sec以下

実験データork6
寸法表ork7

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